作品概要 築63年の家屋が直面した躯体の老朽化問題と、生活様式や家族構成の変化による間取りの見直しを目的に始まった計画である。これに対し、建築家からはいわゆるスクラップ アンド ビルドではなく、その家と家族で育ててきた思い出や雰囲気を活かしたリフォームの提案が行われた。プランニングの要は、南面裏庭にある樹齢100年を超える桜の樹を生活のなかに再生させたこと。それまで南側に陣取っていたトイレや納戸といった部分を減築しながら開放的なデッキを用意し、生活のメインルームである居間・食堂・台所と連続させることで光と風が通り抜ける豊かな住環境としている。半世紀以上前にプランニングされた住まいの要素を整理し、新たに建て主の生活にあわせてプログラムした結果、増改築ならぬ減改築が行われた。減改築という発想とその可能性を示している。 審査講評 既存のものを残す部分は思い切って残した結果、大胆な新旧の対比がうまれ古い部分も見事に蘇った。元の建物の記憶を残しながらも、建て主の生活にあわせて新しいデザインや増築ならぬ減築まで採用し、空間の流れを作り直した点が高く評価される。リフォーム後、裏庭でひっそりと生きてきた桜は室内から眺められるシンボルツリーとなった。明快なコンセプトと潔さのある、魅力的なリフォーム事例である。 受賞建築家のコメント このような愛着の強い建物のリフォームをする時には、われわれ設計者よりもクライアントの決心する気持ちの方が大変なことだと思います。時間をかけリフォームを決心されたクライアントに対して、設計者として応えたいという思いを胸に設計を進めました。そして現場もそれに応えてくれ、最後にこのような賞までいただき、出来過ぎのような気がします。ありがとうございました。 住まい手のコメント アイデア満載のリフォームが、築60余年の愛着のある家を壊すことなく新しい空間として蘇らせてくれました。冬でも一日中明るいLDKは、あまりの変わり様に本当に驚きました。分割して設置した床暖房は使いやすく、バーチなど床材の感触は裸足で楽しんでいます。新しい大きな窓の外には今まで気付かなかった裏庭の景色が現れ、古木となった桜をゆっくりと眺める場所ができ夫婦で喜んでいます。 床暖房について 住宅の東西を貫く台所・食堂・居間の大空間にあった暖房法として、温度ムラができにくく安定した熱環境が得られるガス温水床暖房を採用しました。リフォームにより新たに南面から入る光と風に加え、床暖房のふく射熱と伝導熱の相乗効果から、常時快適な住環境が得られます。 |