作品概要 富士北麓に位置する敷地は、冬季の外気温−15℃積雪80cmを記録する厳寒の地。南面に富士山の雄大な姿を望み、緑豊かな周囲が広がる。近い将来の「終の住処」に対し建て主は「自然と一体化した家で、暖かく老後の生活を楽しみたい」と希望した。それに応える設計概念は、「山荘の開放感と熱環境の共生をテーマに“夏涼しく冬暖かい住まい”を簡潔なフォルムにデザイン化する」というもの。暖房は複数の採暖方法を組み合わせた効率的なハイブリッド方式を採用。朝はガス温水床暖房、その後日射採熱や灯油ストーブ輻射熱を併用する。また、熱を外に逃がさず床下を循環させ利用している。竣工後調査では常に室内外温度差10−20℃が確保されており、1月のガスと灯油の燃料費を31日換算した金額は、約\15,000。暖かく省エネの「終の住処」となっている。 審査講評 富士山麓という土地柄からも熱環境についてよく考える必要があったのだろうが、「あたたかな住空間デザイン」という命題に対し、真摯に真正面から取り組む姿勢を感じる作品だ。雪を断熱材としてとらえる発想や複数の暖房設備を組み合わせた緻密な熱環境計画が評価される。のみならず、芯のある設計意図を貫く姿勢もみられ、結果として魅力的な造形となっている。 受賞建築家のコメント 「冬暖かく、夏涼しい」ことが絶対条件でした。曖昧さが許されない設計を求められましたわけですが、こうした基本性能はあくまでも住まいに当然備わっているべきものだと考えます。寒冷地にありがちな、硬く閉じた表情の空間を開放して、富士山の大らかなシルエットに呼応するような山荘をデザインしようと直感しました。 住まい手のコメント 2度目の冬、豊かな自然の中の期待以上の快適な生活に大変満足しています。昼間、周囲に気兼ねなく太陽光を受けて入浴するのは露天風呂気分ですし、厳寒時の夜間に暖房なしでもパジャマのままトイレに行けるのも嬉しいことです。近くリタイアを迎える夫婦二人、「長生きできそうだね」と第2の人生を楽しみにしています。 床暖房について 北海道の旭川に匹敵するほどの酷寒の地で、冬も暖かく過ごすために設置したガス温水床暖房。タイマーで起床1時間前から稼動させ、目覚めた住まい手をあたたかく迎える準備をします。日射熱や灯油ストーブの併用、室温の循環再利用も採り入れ、快適な空気環境を実現しています。 |